この本『キネマの神様』を読み終えた後、しばらくの間はある種の余韻に浸っていました。まるで良い映画を観た時の、エンドロールが流れる時間に感じたものと同質です。去年読んだ本で一番良かったと思った『楽園のカンヴァス
』にならぶくらい良いと思いました。良いなと思った本に出会えると、幸福感でいっぱいになります。
映画好きの娘が失業してしまうところから、物語は始まります。父親はギャンブル好きで、大きな借金を作ります。ギャンブルから足を洗わせるため、大好きな映画を観させるように仕向けます。娘は会社を辞め、無職になってしまったことをなかなか言えません。
こんなふうな前段は、ちょっと退屈な感じがしていたことは、事実です。ところが、3分の1くらいのところで、物語は急展開いします。最初はそんなでも無かったのですが、後半でぐいぐいと引っ張られました。そして最後には、感動の涙を流してしまいそうになります。久々のヒットでした。
(21冊目/2013年)