No.1499『某』川上弘美

No.1499『某』川上弘美

なんとも不思議な物語だったと言うのが、この本の印象だ。
主人公は、〈誰でもない者〉である。男性にも、女性にも、いろんな年代にも擬態する生物が、〈誰でもない者〉なのである。突然、その時生まれたかのように、記憶を持たずに現れる。そして、次々といろんな人間に擬態して行く。

よっぽどのことがない限り死なない。人間ではないので、人間の感情は理解し難いが、時間の経過とともにいろいろな経験をして行くことによって、人間の感情を知り、その感情を持つ場合もある。

読み進めて行くうちに、この物語は人間でない者を描くことにより、人間を描いているのではないかと感じた。
一番のテーマはやはり「死」なのかも知れない。死なない〈誰でもない者〉が死を知ることによって、ぐっと人間に近づく。
死があるから人間は生きているんだよ、と言われているような気がする。
(15冊目/2020年)

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