No.1502『東京観光』中島京子

No.1502『東京観光』中島京子

7つの短編が収録されている短編小説集。
どの短編も、日常的な出来事を描いているのだけど、その日常的な出来事がちょっと変わっている。言い換えれば、日常的でないのかも知れない。ミステリアスな場合もあり、ちょっと心温まるものもある。これまで読んだ中島京子さんの作品とも、ちょっと違っている気がする。

「植物園の鰐」の主人公は、鰐に会えるという植物園へ行き、鰐が居るかも知れないエリアへ行こうとするが、なかなか辿り着けない。何だかそういう夢を見たことがある。辿り着けそうで辿り着けない話。モデルになっているのが昔何度も訪れたことのある小石川植物園だったので、何だか懐かしくなった。バナナワニ園なら鰐に出会えるだろうけど。

「シンガポールでタクシーを拾うのは難しい」は、ある夫婦が格安ツアーで滞在期間が短い旅行に行く話。夫婦間のぎくしゃくした部分とほっとする結末が心温まる。

「ゴセイト」は、ミステリアスな作品。ある学校に現れる「ゴセイト」は放課後にひとり残っている生徒に話しかけてくる。学生時代の思い出のような、大人になって忘れてしまうそんな儚さを感じる作品。

「天井の刺青」が面白かった。アパートの水漏れをきっかけに下の階の男性と仲良くなった女性が主人公。なぜかお互いの部屋を交換することになるが、それにはある謎が隠されていた。

「ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイ」は、女性同士の友情を描いた作品。男同士でこういうのはあるだろうかと思いながら読んだ。女性同士なら割とあるだろうと思ったが、これは勝手な想像に過ぎない。

「コワリョーフの鼻」は、何だこれはとても難解な小説だろうかと思いながら、我慢して読み続けると、最後の方でそういうことだったのかとなる。回りくどいのかも知れないけれど、読後感の良さは収録作品の中でも一二を争う。

表題作の「東京観光」は、東京タワーとか雷門とか、一般的な観光地を巡る観光とはちょっと違っていた。研修のために出張する主人公がビジネスホテルで変わった出会いを経験し、出会った女性と東京観光をする話だけど、主人公の一番の思い出が、ちょっと変わっている。
(18冊目/2020年)

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