どこか『なでしこ物語』と似ているところがある、『風待ちの人』とも、と思ってしまいました。
傷付いた主人公が多い気がします。再生する物語が多いのだと思います。
この物語のモチーフは、ホームスパン(Home Spun)です。家で紡いだ毛織物と言う意味なんでしょうか。原毛から手染め、手紡ぎ、手織りによる毛織物のことのようです。
この本を読んで、初めて知りました。
中村工房のブログを拝見すると、良くわかります。
Web上で見るだけで、とても暖かい織物だと思います。その暖かさが、この物語に出て来る人たちの温もりを象徴しています。
高校でちょっとしたいじめに遭った気弱な女子高生が主人公です。
彼女は不登校になっていて、ちょっとしたきっかけで祖父を頼って盛岡へ行きます。その祖父がホームスパンの工房を営んでいるのです。
彼女の両親もお互いにぎくしゃくした関係で、お互いを繋ぐ糸は、かなり縺れている感じです。
きっと、このシーンが物語の行方を示していたんだなと思うところがありました。
これから読む方のために、ここは詳細を書きません。
主人公と父親の従姉妹の息子のシーンなんですが。
良い人たちだけが登場する、良い物語なんですが、それだけにほっこりとする物語に仕上がっています。
これが伊吹有喜さんの小説の共通点かも知れません。
人間の温かみと再生の物語と言ったところでしょうか。
本屋さんで見かけて、ぜひ読もうと思った本でしたが、期待を裏切ることはありませんでした。
(53冊目/2020年)