主人公とその彼女、そして彼と同期入社の親友、この3人の若者たちの人生のマジックアワーを描いた青春小説でしょうか。
始まったものには、必ず終わりが来ると言う虚しさが、とても悲しく思えます。
現状を変えようと藻掻きつつも、一歩を踏み出す勇気が無くて、「こんな筈じゃなかった未来」に居るのは、多分誰しも感じることじゃないかと思います。
激しく叫び、苦しむ主人公のシーンもあるのですが、この小説はとても静かな気がします。
時折流れる音楽に関する記述もあるのですが、何故か音の無い小説のような気がします。花火のシーンも、宴会のシーンも、何だか周りから音が消えているかのような、とても静かな小説に思えます。
淡々としていると言うのでしょうか、劇的なシーンも淡々と進んで行く気がします。
とても印象に残った文章がありました。
時間はたくさんの過去を洗い流してくれるし、いろんなことを忘れさせてくれる。でも決して、巻き戻したりはしてくれない。不可逆で、残酷で、だからこそ、その瞬間が美しい。
(73冊目/2020年)